音楽畑 オーサーズベスト vol.2
収録曲
- 1.素晴らしきかなこの世界
- 2.秋風の頃
- 3.夕陽
- 4.苺摘む朝
- 5.オルドスの泉
- 6.夢
- 7.ハート・ウォーミング
- 8.鯨のボレロ
- 9.故郷(ふるさと)に帰りて
- 10.心優しき人
- 11.テクスチュアー
- 12.じゃぽにか
- 13.向日葵畑(ヒラソル)
- 14.伝説の黒い森
- 15.ジャスミン香る丘
- 16.自由の大地-変奏曲-
LINER NOTES
素晴らしきかなこの世界 Wonder of the World (U-CAN『世界の謎と驚異』テーマ曲)
18歳の時に初めて日本を出てあれから50年、いまだに年に最低一回は外国にでている。もう行ってないところなんて無いでしょうなどと言われるがどういたしまして、行きたいところはまだ山程あります。残念ながら最近世界中少し治安が悪くなったのと、体力もちょっと落ちて旅行するのが億劫になって来ました。テレビの旅情報番組など見ていても良さそうなところは沢山ある。そうだ、まず体力だな。ということで今日も近所を自転車で探検です。おかげで自分の家のまわりも結構捨てたものじゃないということを発見しました。
(Author's Best 2 '05)
秋風の頃 Autumn
フランスには、パステル調の淡いブルーの空が良く似合うし、イギリスの田園風景には、濃い緑の色が欠かせない様に、日本は何と言っても、白い民家の壁と、庭先になっている柿の実の色だろう。高く晴れ上った青空をバックに、それはまことに鮮やかなジャパネスク(日本調)。吹き過ぎる風にふと秋を感じる頃、群をなして舞い飛ぶ赤とんぼなんかも、これ又捨てがたい。
(音楽畑 11 '94)
夕陽 THE SUNSET (フジテレビ系列『カノッサの屈辱』テーマ曲)
新潟で毎年夏に夕陽コンサートが行なわれる。日本海に落ちる夕陽、それも、佐渡ケ島の上に落ちる夕陽は、日本一の夕陽で、夕日が落ちるのと同時に、コンサートが始まるわけである。砂浜に集まった人達と、今年は二万五千人を越えて大盛況だった。そのまん丸の大きな夕陽をイメージして作曲したのが、この曲である。
(音楽畑 5 '88)
苺摘む朝 Strawberry Morning (FM NACK 5『MUSIC HOLIDAY』テーマ曲)
最近、トマトとか胡瓜とか一年中食べられる様になったのは嬉しいんだけど、時々懐かしく思い出す味がいくつか有る。塩をつけて丸のままかぶりついたトマトの日向くさい味や、畑から引っこ抜いて来たトウモロコシを皮むいて、そのままかじったあの何とも言えない甘みなんかは、忘れられない。特に忘れられないものに朝摘みの苺が有る。戦争が激しくなって来て食べ物がだんだん手に入らなくなってきたものだから、どの家も自給自足と言うことで家庭菜園を始める様になった。勿論、わが家も例にもれず庭に野菜や苺を植えたのだが、なんたって子供が五人もいたんじゃ焼け石に水。それに素人の悲しさで、折角出て来た芽が次の日は根っ切り虫にやられたりして、たいして腹の足しにはならなかった。それでも苺は、割に丈夫で小さいけどおいしい実がいくつもなった。早起きした者が食べられると言う訳で、朝露の未だ干ぬ苺畑に駆けつける。首尾よく葉っぱの裏に隠れていたちいちゃな赤い実をみつけると良く洗いもせず口の中にほうり込む。赤いやつが無くなると、今度はすこし白いやつに手を出すと言う具合で苺畑はすぐに空っぽになる。あの小さな宝石の様な赤い実のあの甘酸っぱい味は今だに懐かしく思い出す。
(音楽畑 12 '95)
オルドスの泉 Erdus
上海から西に2時間ほど飛ぶと内蒙古の包頭に着く、中国の自治区で砂漠の町だ。そこから更に車で2時間、オルドスに到着。赤茶けた砂漠と駱駝の町、観光の砦は四方をガラス張りにした大きなレストランとモンゴルショーを見せる劇場だ。ケーブルカーの乗り場とお土産屋の向こうはずーっとどこまで行っても砂漠。取りあえず砂漠の探検に出かける、靴の上に布の長靴をはいて少し砂の上を歩いて見る。柔らかな砂を踏みしめながら丘に登ってみると起伏に富んだ小さな砂山が何処までも続いてまるで別世界のようだ。その先に青く光っている小さな池が見える。砂丘の陰にひっそりと佇んでいるオルドスの泉、鼻を鳴らしながら騒がしく駱駝の群れが横を通り過ぎて行く。風にのって何処からともなく聞こえて来る馬頭琴の調べ....と、まあそんな風景を想像しながらお聞きください。馬頭琴は包頭から程近いところに住んでいるリポの素晴らしい演奏。しばし目を閉じてお楽しみください。
(Author's Best Vol.2 '05)
夢 Mon Reve
かなわぬ夢、儚き夢、夢物語り、遠き夢、夢みたいな事言うな、などなど、どうも夢と言う言葉には何か頼りない、いい加減な、ややネガティブな表現が多い様に思われる。
今まで色々な事柄を確率の高さのみで判断して突っ走ってきた結果、バブルは崩壊するは、世の中の価値基準はひっくり返るは、一体俺の人生って何なの? と考え込んでいる人が何と多いことか。
もうこうなったら腹を捉えて、人生一番確率の低いものに賭けて見ましょう。そうです、皆で夢を見ましょう、駄目でもともと、どうせかなわぬ夢なんですから。
(音楽畑 15 '98)
ハート・ウォーミング Heart Warming
情けはひとのためならず、という諺御存知ですよね? では意味は、などど質問すると馬鹿にするなとおこられそうですが60才以上と以下では答えが違うそうです。知ってました? 60才以上の人の答えは情けをかけると回り回って自分のためになるからひとには親切にしなさい。60才以下の人はなまじ情けをかけるのはその人のためにならない、という答えが多いそうです。ちなみに今のところ正解は前者だそうです。ところであなたはどちら?
(Author's Best Vol.2 '05)
鯨のボレロ Whale's Bolero (サントリー生ビール CM曲)
鯨って大きいくせに、可愛い目をしてる。馬でも兎でもそうだけど、あまりものを言わない動物に限って、訴える様な、潤んだ様なやさしい目をしているのは困る。兎とか羊とか、ヨーロッパの人は好んで食べる。食べつけると一寸、病みつきになる様なおいしさだけれど、ヨーロッパの人は料理をしながら、あの訴える様な優しい目を想い出さないのだろうか?
もっとも僕も尾の身や、コロなんか大好きだけど、鯨の可愛いい目や知能指数の事なんか考えないか…。
それじゃ、いかんと言っているのが、ニュージーランドの団体、グリーンピースです。知ってか知らずか、今日も鯨は大空を悠々と渡って行く。
(音楽畑 6 '89)
故郷(ふるさと)に帰りて My Hometown
どんなに旅が楽しくても、所詮はストレンジャー。山海の珍味も、優しき人の心も、ほんの一刻(ひととき)のこと。帰る場所が有るからこそ、いずれの地をさまよっても楽しいので有って、帰る所なければ、糸の切れたたこ。まことの放浪者には、心の休まる時もない。故郷は遠くに有りて思うもの、などと誰かがのたまったけれど、久し振りに故郷の地におり立てば、あたたかさが身体中にしみ渡って来る。どんなに様変りしようとも、心の中の故郷だけは、何年たっても昔と変らぬ風景だ。
(音楽畑 11 '94)
心優しき人 Invincible (映画『不撓不屈』テーマ曲)
強いってどういうことなんだろう。音楽では強さを f 記号で表す、f よりも ff が強くて、ff より fff のほうが音が大きい。だから f 記号は絶対音量を表すものでは無くて相対的な音量を表すということで、理論上は f さえ増やしていけばいくらでも大きい音を出すように要求できる、上には上が有るという訳だ。ついこの間までは打楽器と金管楽器がオーケストラの中で一番強い音をだす楽器だった。勿論人間の力には限りがあるから強さにも上限があったのだが、近年電子楽器が出てからヴォリュームノブさえまわせばどんどん大きな音がだせるということでマーケットにでまわる音楽の強さが大幅にアップした。その上に自己主張をする人が増えたおかげでテレビなどの音声もやたらに大きくなったようだ。最近では耳がすっかり慣れてしまって音が大きいということはそれ程インパクトを感じ無くて、むしろふっとした沈黙の間や、弱い音量の楽器のソロになった時のほうがインパクトを感じる。つまり強さが弱くて弱さが強いということがあり得るのです。気は優しくて力持ち、という事ですかね。
(Author's Best Vol.2 '05)
テクスチュアー Texture
それぞれの美しい音色とフレーズを横糸と縦糸にして素晴らしい織物が紡ぎ出されるようすは、まるで美しいゴブラン織りが完成されて行くのを見るようです。渡辺香津美さんと野呂一生さんの絶妙な絡み合いをお楽しみ下さい。
(音楽畑 17 '00)
じゃぽにか Japonica
世界がこれだけ狭くなって来ると国のアイデンティティーとか愛国心とか段々なくなってくるのかな、と思っていたらとんでもない。中国や韓国は勿論、ヨーロッパ連合までなにやらおかしくなっているようだ。おかしくなったというか、むしろそれが普通で日本が少し異常なのかも。国歌を歌わない教師がいたり国旗もほどんどの家にはないとなると我々のほうがどうやら非常識ということになるのでしょう。今まではそのへんのところはあまり興味も無かったというか、戦争中の記憶もあって敢えて避けてきた僕も、年を重ねるにつれ最近は立派な愛国者になりつつ有る自分に気が付いてアラアラと思ったりする。しかもまずいことに近頃は靖国やら竹島やら海中ガス油田やらと愛国心をかきたてる話題に事欠かない。ということで(?)ここのところ音楽の嗜好も少し変わってきたように思う。さー、これからガンガンアジアニッポン方向にいくぞーと宣言したもののなかなか筆が進まない。そうか無理やりにこだわりすぎても駄目か、自然体だなーヤッパリなどど自分に言い聞かせたりしている。あれやこれやあまり考えない頃に書いたのがこのジャポニカ。今聞いてみても中々良く出来ている、などと自分で言う奴がいるか! すみません。
(音楽畑 2 '85 / Author's Best 2 '05 記)
向日葵畑(ヒラソル) Girasol
スペインの太陽海岸は陽光きらめく素晴らしいリゾート。グラナダから国道を一路南下して行くと地中海にどんとぶつかるのだが、そこからジブラルタル迄の海岸が太陽海岸と呼ばれている。勿論お目当ては太陽海岸だがその途中の町や景色も素晴らしい。特に凄いのは、何処までも続く向日葵畑だ。アンダルシアの抜けるような青い空とあの鮮やかな黄色は本当に良く似合う。
シャンと首をもたげて姿は良く訓練された兵士達の様で、黄色い帽子にグリーンのユニホームの無数の兵士たちが海に向かって行進して行く様な錯覚に陥る。
(音楽畑 12 '95)
伝説の黒い森 Schwarzwald
パリ留学時代の夏休みは、良くあちこち旅行をした。来る時の船の中で仲良くなったフライブルグの友人を訪ねたのが、59年の7月。石にかこまれたパリから出掛けて行った僕にとって、ドナウェッシンゲン迄、何処までも続く針葉樹の黒い森は、本当に心にしみた。欝蒼とした森の中を散策すると、心は何時しか、グリム童話の世界に入って行く。近所には、ファウスト博士の家が有ったりして、ビールのジョッキを片手に、ここはまさしくドイツ。
最近、友人が見せてくれた「黒い森」の写真を見てびっくり。まるで墓標の様な、枯木の林、林。50%以上が酸性雨にやられてるという。これじゃ、ヘンゼルとグレーテルも、道に迷わないよね?
(音楽畑 10 '93)
ジャスミン香る丘 Jasmine
ホノルルの空港に着くと良くレイをいただく。レイは宗教的な意味も有るし愛情や友情をも表し、いただくとなかなか嬉しいものだ。ただ見た目の涼しさに反して2,3連かけられると意外に重たく、ジャスミンやプルメリア等が沢山使用されているとあの濃厚な香りで頭がくらくらする。
勿論いかに濃厚とは言え自然の香りはいくらかいでも飽きがこず、僕の大好きな匂いのひとつだ。フランスでは香水に、中国ではお茶に、フィリピンではサンパギータという名前で国花としてそれぞれ広く親しまれている。 夏の夕暮れ時、どうやら一雨来そうな低い雲の下、ジャスミンの香りがあたり一帯に立ちこめる。いつの間にか夕闇があたりを包んで、恋人たちの時間がやってくる。
(音楽畑 19 '02)
自由の大地 -変奏曲- Variation Freeland
あちらこちらで皆様に愛されて“自由の大地”も無事12才の誕生日を迎える事となりました。有難うございます。
ピアノバージョンやらヴォーカルバージョンやら、色々やってみましたが、今回は一寸大人の雰囲気で変奏曲。12分01秒、フルオーケストラの魅力をたっぷりお楽しみください。
(音楽畑 18 '01)
(このライナー・ノーツは、CD制作当時に書かれたものです。)