音楽畑18 ア・ラ・ターブル
収録曲
- 1.素晴らしきかな人生
- 2.時は優しく流れて
- 3.2つの世界
- 4.ル・ローヌ(河) 2002
- 5.イヴニングスター
- 6.サニーサイドアップ
- 7.ナディア マイ ラブ
- 8.紅のタンゴ
- 9.ピアノソリチュード
- 10.自由の大地 変奏曲
LINER NOTES
素晴らしきかな人生 Be Well (Unisunstar CI music)
最近、昔の仲間がみんな還暦やら古希やらでおめでた続きです。音楽生活何周年とか、授賞記念パーティーなんかもあって、それはそれで又うれしい事です。かく言う私も、一昨年は音楽生活40周年のコンサートを開催して、皆様にご迷惑をお掛けしました。ま、めでたい話も多いが、最近みんなが集まると身体に良いものの話が圧倒的に多くなる。ビタミン剤から一寸怪し気な東洋の秘薬に至る迄、色々と話が盛り上がる。たまにクラス会なんかに出席しても「一寸酒は」とか「一寸脂っこいものは」とか「一寸甘いものは」等と、健康系の話題が多くなる。人生いろいろ有ったけど、やはり健康で人生を全うするのが一番だ、などとお坊さんの様に悟ってしまったりするのも年のせいですかね。かくいう私も、この誕生日でめでたく国民年金を頂く身分となりました。まっ、皆様どうぞすこやかにお過ごし下さい。
時は優しく流れて Sweet Moment
昔から還暦を迎えたら仕事をやめて少しノンビリしようと決めていた。まわりにもそう言い続けてきたのだが、それから4年たってちっとも身体が楽にならない。特に今年はひどかった。友達やスタッフも心配して、少し仕事をセーヴしたらなどと忠告してくれる。有りがたいことだ。それじゃ取りあえず君に頼まれた例の来週の仕事からキャンセルしようかなーー、と言うと、いやいや休むのは来月からにしましょうなどと言われて、その話はそのままうやむやになってしまうことが多い。ま、いまだに仕事があるのは、とても有りがたいことでは有りますが、やはりもう少しボヤーっとする時間を持ちたいなどと贅沢なことを考えてしまう。朝ゆっくり目がさめて、さて今日は何をしようかなと思ったりする瞬間や、小春日和の日差しを浴びながらお寺の境内の茶店でお団子をいただいたり、訪れた場所が気に入ったのでもう2、3日滞在予定を伸ばしてしまったり、そんなありふれた事柄に憧れてしまいます。そこでは時が限りなく優しく流れていくに違いありません。誰もが優しく、誰にも優しくできるそんな空間です。いいなー。でも、いざそんな日々が本当に訪れてくれば、今のクレイジーな日々がたまらなく懐かしく思えるかも知れません。
2つの世界 Our World & Another World
ロンドンレコーディングの最終日、スタジオの音を消したテレビに、世界貿易センタービルが炎上している絵が写った。真っ黒な煙を上げているビルの中に、スローモーションのプレイバックでハイジャックされた飛行機がビルの中に吸い込まれて、紅蓮の炎を上げる様子は、まるで映画のワンシーンを見ている様だった。西欧諸国とイスラム国家、こちら側とあちら側、善玉と悪玉、この日を境に世界は二色に塗り分けられた感じを受ける。悲しい事だ。せめて、音楽の世界ではみんなが仲良く溶け合いたいなと思う。自分では、アジアをイメージして書いたのに、エンジニアのマイクが、東ヨーロッパの絵が浮かぶね、と言ったのがとても面白かった。
ル・ローヌ 2002 Le Rhone 2002
あちらこちらで皆様にご愛顧を頂いております。今回15才の誕生日を迎えるに当たり、少し新し目の装いでお送りします。 キラキラサラサラ流れる水のシズル感をお楽しみください。
イヴニングスター Evening Star
遊び疲れて家に帰ってくるのは何時も夕暮れ時、母が夕食の支度をする音を聞きながら庭に出る。あたりが段々暗くなって空の色がブルーから深い紺色に変わってゆく。最初にすぐ見つけるのは宵の明星、空気が澄んでいるのでキラキラと輝いて地面に木々のシルエットが落ちる。それもいっときで空にひとつ又ひとつと星が明るさを増していくにつれてすぐに夜の帳が落ちて、しっとりとした夜の空気があたりを包みはじめる。一番星に願い事をすれば祈りが叶うという言い伝えは、洋の東西を問わず有るようだが、最近の子どもたちはどうなんだろう。何も信じられない今の世の中だからせめて星に祈りを捧げるくらいは良いかなと思ってしまう。
サニーサイドアップ Sunny-Side Up (FM NACK 5『MEET THE PERSON』テーマ曲)
僕は、朝食ってなんだか好きだな~。納豆とか海苔とか干物の和朝食もいいけど、イギリス風のフルコース朝食は大好きだ。卵は目玉焼がいい。目玉焼は勿論ターンオーバーなんかで両面焼くんじゃなくってサニーサイドアップがいい。あの真黄色の目玉がこっちを見てニコッと笑っているのを見ると、何か今日も又良い事が起きそうな予感がする。そんな話をしていたら、イギリスの卵は割るとすぐつぶれてしまって目玉焼にはならないよ、と言われた。そうかな。いやそんなことないぞ、と探したらちゃんと有りました。自然農園の放し飼いの鶏の卵は、きれいにサニーサイドアップになります。 今日も一日良い日であります様に。
ナディア マイ ラブ Nadia (映画『ナイル』テーマ曲)
エジプトにはじめて行ったのは、18歳の秋。ピラミッドやスフィンクス、涼やかな影を落とすなつめ椰子の並木道。何もかもが目新しく新鮮で、町を往き交う女性達のベールの美しい横顔も印象に残った。一昨年、なんと45年ぶりにカイロを訪れた。日本とエジプトの合作映画『ナイル』の音楽を担当することになって、ロケハンを兼ねての旅行は、とても懐かしく楽しかった。エジプトの女性は、昔の明治の頃の日本女性の様につつましいと聞いた。ま、よその花は赤く見えるという事か。 『ナイル』のエンディングテーマで、主人公のエジプト女性を描いた曲です。
紅のタンゴ Tango apassionato
なんで僕はこんなにタンゴが好きなんだろう。音楽畑にも、ここの所毎回タンゴを一曲書いている。ウチのオヤジもタンゴが好きで何曲も書いているが、もともと日本人は、どちらかといえばタンゴ好きな様だ。特に年配の方はタンゴを聞いて、音楽の虜になった方が多い。やはりあのリズムの潔さ、バンドネオンの音色、甘いメロディーは、日本人の趣向にピッタリ。普段はどちらかと言えばアッサリ系の僕も、タンゴを書く時は結構アグレッシブになる。真っ赤な血汐、真っ赤なバラ、いずれも燃えたつ様な情熱のシンボルだ。 いくつになっても、真紅のハートを燃やし続けましょう。
ピアノソリチュード Piano Solitude
楽器にもはやりすたりが有る。ちょっと前までサックスとギターが大もてだった。どの曲もイントロや間奏はほとんどそのふたつの楽器が受け持っていたもんだ。そのもっと前はトランペット、もう歌謡曲の前奏なんて全部(ちょっと大袈裟)トランペット。洋楽でも「夕陽のガンマン」とかマカロニウェスタンやヒーロー登場なんかに欠かせない楽器だった。そしてこの何年かはなんといっても主役はピアノだろう。それもエディー・デューティンやカーメン・キャバレロみたいに綺麗に演奏するのではなく、メロディーを単音で弾きながら、さりげなく左手のコードでサポートするといった奏法が受け入れられている。テクニックに溺れないでピアノの持っている音色の素晴らしさを生かすというと、ちょっと格好良すぎる。たいして上手でなくてもなんとかさまになると言うのが本音で、私みたいな下手っぴーには大変助かるのです。 あの強烈な存在感を持ったトランペットやサックスやギターに比べるとピアノの単音の響きはまことに控えめだ。何事につけても押し付けがましいことや、強力な主張の嫌いな現代人にとってはあの控えめさがピッタリと来るのかもしれない。
自由の大地 -変奏曲- Variation Freeland
あちらこちらで皆様に愛されて“自由の大地”も無事12才の誕生日を迎える事となりました。有難うございます。
ピアノバージョンやらヴォーカルバージョンやら、色々やってみましたが、今回は一寸大人の雰囲気で変奏曲。12分01秒、フルオーケストラの魅力をたっぷりお楽しみください。
※このライナー・ノーツは、CD制作当時に書かれたものです。