音楽畑19 Invitation
収録曲
- 1.トランスパラン
- 2.いざない
- 3.ラヴェンダー モーニング
- 4.トワイライト ベイ
- 5.一条戻り橋
- 6.今・船出の時
- 7.過ぎ去りし時を訪ねて
- 8.星のバラード
- 9.ジャンピングバロック
- 10.子犬のラグ
- 11.ロマンス
- 12.ジャスミン香る丘
- 13.キープ・ドリーミング・オン
- 14.星へのいざない
LINER NOTES
トランスパラン Transparent
何年前になるかちょっと覚えていないが、仕事の帰り道カーラジオから何とも言えない涼やかな音が流れて来た。それが姫路の甲冑師で明珍さんの作になる玉鋼製火箸の音色だと言うことが判った。たまたま今年、姫路でコンサートが有ったので早速明珍さんの工房を訪ねて無事2本程火箸をゲット。早速、愛知万博のプレイヴェント催事に使用したのだが、あの涼やかな音色はお客さんのハートをしっかりとらえたと思う。日本刀に使用される純度の高い玉鋼の透き通った音色は心を落ち着かせる。ちなみにトランスパランとは透明という意味です。
いざない Invitation
最近つくづくなんでもっと色んなこと勉強しなかったんだろうと思う。子供の頃にピアノをさぼったことはとりあえず置いておいても、習字も絵もダンスも、(ちなみにこの三つとも空下手でーす)俳句もお茶も剣道もフェンシング、医学に法律に飛行機の操縦になんでもかんでも、もっともっと色々勉強したかった。勝手になんでもやれば、とおっしゃいますが残された時間を考えるとねー、そう何でもやる訳にはいきませんよー。ですから私最近少し焦っています。このアルバムをお聴きのみなさん、人生そう長くないんですから今から色々トライされたら如何ですか? 意外に新世界が開けるかも…。そして気に入ったものが見つかったらどんどんみんなを巻き込みましょう。
ラヴェンダー モーニング Lavender Morning
(FM NACK 5『シャン ドゥ ラ ミュージック』テーマ曲)
47年ぶりのマルセイユへのセンチメンタルジャーニーの後、そのままプロヴァンス地方の旅行に出掛けた。ちょうどシーズンだったことも有ってどこのホテルも満員、本当はエックス・アン・プロヴァンスに滞在したかったのだが、涙をのんでマルセイユから1時間程の小さな町ゴルドの可愛いホテルに滞在した。目の前に細長くリュベロン山脈がひろがる小高い丘にラヴェンダ-が咲き乱れている風景はまるで絵葉書のようだ。近くにフランス三大名所の一つと言われるヴォークリューズの泉やセナンク修道院等があって訪れる場所には事欠かない。中でもセナンク修道院は僧院そのものはおいておいてもまわりのラヴェンダ-畑がすごい。見渡す限り紫色の花の波が風にそよいでいる姿には息を呑む。
トワイライト ベイ Twilight Bay
太陽が地平線に最後の輝きをちりまきながら沈んでゆくと、海面を吹き過ぎる風も爽やかに初夏の夜がはじまる。ヨーロッパの夏は本当に気持ちがいい。とくに日が長くなる6月頃は暮れなずむまでの時間が素晴らしい。オレンジ色の雲が深い紺色に変わっていくにつれ、海は刻一刻とその色を変えていく。やがて訪れる夜への期待が高まっていく初夏の海辺、トワイライト ベイへあなたをご招待いたします。
一条戻り橋 Bon Retour
世の中景気が悪くなると占い、おまじない、心霊現象等が流行るようになる。かくいう私も、このてのものが大好きでジョナサンの星占い、弁天さまのお守り、飛行機事故よけの護符、厄よけの御札各種、魔除けのブレスレット、探せばまだまだ一杯有る。勿論僕自身は本来どちらかと言えば理論的な考え方をする人間で、結婚式はホテルの神社で式を挙げ、初詣にも大体毎年行き、死ぬと今の予定では仏式でお経をあげてもらうことになっている。ま、多少異論もおありでしょうが、一般的な日本人の一人と言わせてもらって良いと思う。勿論、僕も10代の頃はお守りや護符などてんから馬鹿にしていたけど、最近の若者は結構そのてのものを本気で信じているらしい。安倍清明の流行などもその一つの例で、そのお陰で昔は特に観光名所でも無かった京都の一条戻り橋なんかが若い女性の人気の的となっているようだ。昔嫁入りするときには、出戻りするといけないと言うのでわざわざ橋を避けて通ったらしいが、最近のお嬢さんがたにはそんなことはどうでも良いことなのでしょう。逆に旅に出て無事に帰ることができたら「Hi! I'm back!」とお賽銭の一つも上げようではないか。ちなみにBon retour(ボンルトウル)はフランス語で「おはよう お帰りやす」の意味であります。
今・船出の時 Full Sail
人生にはだれでもここ一番という踏ん張り時が、一度は訪れる。そのために我々は普段からいろんなことを知らないうちに準備しているのだろうか。ただ残念なのは、何時それがやってくるのか分からないことだ。ま、何時でも一生懸命やりなさいという事なのだろうが、そうはいきません。もし誰かが、さ、ここが貴方の一生一度の頑張り時だ、と言ってくれたらその時は死ぬ程張り切りましょう。今が貴方の新らしい人生への船出の時なのです。
過ぎ去りし時を訪ねて Sentimental Journey
先日神戸で震災以来少し元気のない市民を勇気づけようと言うコンサートを行った。その折今から47年前に神戸埠頭からパリに向かったお話しを井戸知事にしたところ早速当時の場所を調べて下さった。ポートピアホテルの自室から懐かしく昔の波止場を眺めているうちに、無性にマルセイユに旅したくなった。東京を朝11時25分に発ってマルセイユに着いたのは同じ5日の午後8時5分。暮れなずむマルセイユの海は夏の夕日に明るくきらめいていた。昔は29日かかって来たことを考えるといささか呆気ない気もする。宿舎のル・プチ・ニースに入ったころには日もすっかり落ちて対岸の街あかりが美しい。次の日はゆっくりめに朝食をとってヴイユーポールからノートルダムとおのぼりさんコース、シャトーデイフに向かうボートの上から懐かしきマルセイユ埠頭を遠望する。真っ白な豪華船と何隻かすれ違って改めて47年前にあそこの港に自分が入ったことを実感する。少し緊張しながらパリ行きの列車に乗り込んだことや青春時代のいろいろな思い出が鮮やかに甦ってくる。必ずしもあの頃に戻りたい訳ではないが、もし戻れるのならやり直したいことはいくつか有る。どの時代の人もみんなそう思いながら過ぎた青春の日々を懐かしく、ほろ苦く思い出すのだろう。
星のバラード Ballade des Etoile
こどもの頃から、星大好き人間でいまだにどうもそこから抜け切れていない。星ナヴィなんてものを購読したり、本屋でもSFチックなものについ手がいってしまう。幼い頃からの夢だった宇宙旅行はどうやら年齢制限にひっかかりそうなのであきらめるとして、何処へ行ってもすぐ夜空をみあげる癖は今だにとれていない。
ジャンピング バロック Jumping Baroque
僕が仕事を始めた頃、そう今からざっと40年くらい前はミュージッシャンのクオリティも今程ではなかった。その中にもキラリと光る演奏家もいて、録音日となるとそのキラリとした人達を何人集められるかが勝負だった。前日になるとインペグ(ミュージッシャンの手配師)の宮ちゃんから電話がはいる。「服部さん! 明日は東京中探しましたがトランペットは一人もおりません! 楽器持ってただ座っているだけのはおりますがどうします?」「どうします? たって宮ちゃん、はいはいトランペット書くのやめます。ないものねだりはいけませんよね。」そうかと思うと「服部さん! 明日は素晴らしいヴィオラが見つかったので3本入れときました。よろしくお願いします」まるで河岸に良いかじき鮪が入ったような感じで急遽2本でいいヴィオラをもう1本書き足す羽目になる。のんびりした良い時代だったのかも知れない。いつも素晴らしい演奏を聞かせてくれるロンドンのストリングスのみんなのために、指使いや難易度を一切無視して書いてみました。ストリングスの皆さんお疲れさまでした。
子犬のラグ Puppy's Rug
子犬ってなんであんなに愛らしいんだろう、今はもう亡きわが家の愛犬クッキーが初めてうちに来た時もぶるぶる震える毛糸の固まりの中からこちらを見上げるつぶらな瞳は、思わず抱き締めたくなるような可愛らしさだった。人間と共に進化してきた犬たちもいかめしい狼の顔から段々優しい顔に変わってきた。より人間に愛されればそれだけ人間社会に迎えいれられ、より長く生き延びられるという自然淘汰の法則にしたがって、子犬はひたすら愛らしくなって来た訳だ。まあ可愛い、などとうっかり抱いてしまったら最後あなたはもう一生その子犬の奴隷です。
ロマンス Romance in Aminor
ベートーヴェンの作品にロマンスというヴァイオリンの曲がある。確か2曲あったがどちらも叙情的な佳曲で比較的易しいところからアマチュアオケで良くとりあげられる。我が成蹊オケでも重要なレパートリーのひとつだったが、ただひとつ気に食わないことはトランペットの出番がまったく無いことだった。僕は不満だが指揮者は下手なトランペットが音を外したりする心配が無いので、いつもよりのびのびと良い演奏をしていたように見えたのは私のひが目であろうか。 ちなみに私のロマンスにもトランペットは入っておりません。
ジャスミン香る丘 Jasmine
ホノルルの空港に着くと良くレイをいただく。レイは宗教的な意味も有るし愛情や友情をも表し、いただくとなかなか嬉しいものだ。ただ見た目の涼しさに反して2,3連かけられると意外に重たく、ジャスミンやプルメリア等が沢山使用されているとあの濃厚な香りで頭がくらくらする。勿論いかに濃厚とは言え自然の香りはいくらかいでも飽きがこず、僕の大好きな匂いのひとつだ。フランスでは香水に、中国ではお茶に、フィリピンではサンパギータという名前で国花としてそれぞれ広く親しまれている。夏の夕暮れ時、どうやら一雨来そうな低い雲の下、ジャスミンの香りがあたり一帯に立ちこめる。いつの間にか夕闇があたりを包んで、恋人たちの時間がやってくる。
キープ・ドリーミング・オン Keep Dreaming On (三洋電機ブランド・ソング)
夢は必ず実現するもの、と或る人が言った。僕もそれは賛成だ。第一そう思っていなければとても夢など見ていられない。そして夢を見続けるのは人間が人間で有ることの証だからだ。キープ・ドリーミング・オン!
星へのいざない Invitation to the Stars
それにしても去年11月の獅子座流星群はすごかったー。世田谷の僕の家からも充分に見えてすっかり堪能しました。でも流れ星って本当は星じゃないんですよね、ただのゴミ。ゴミと言って悪ければ砂利、どっちもあまり印象良くないですかね。でも流れ星見てから天文ファンになる人結構多いらしい。一度星のとりこになるとちょっと簡単には足が抜けなくなります。あんな素晴らしいものが自分の頭上に四六時中広がっているのにほとんど注意を払わないまま一生を終えてしまうなんて本当にもったいないことです。もしご自分の家族やおつれあいにそういう方がおられましたら是非星空の世界へといざなってあげて下さい。
※このライナー・ノーツは、CD制作当時に書かれたものです。