音楽畑8 La Strada
収録曲
- 1.喜望峰への道
- 2.コスタリカ・ハイウェイ
- 3.花通り
- 4.アマデウス通り
- 5.ヴィクトリア・ピーク・ロード
- 6.洛陽大路
- 7.ロンサム・レーン
- 8.恋人達の散歩道
- 9.月影の並木道
- 10.道
LINER NOTES
喜望峰への道 Passage to the Cape of Good Hope
(フジテレビ系列『とんねるずのみなさんのおかげです』エンディングテーマ曲)
ハットリといえば時計じゃなくて、音楽と言われなきゃイカン! とは、オヤジの口ぐせで、まぁその故かどうか判らないが、一応3代目まで音楽家でメシを食っている。
しかし、絵の才能はまったく有りませんねえ。小学校の時もよく、夏休みの宿題で、色々書かされたがまことにひどいものでした。そのひどいハットリが或る夏、珍しく、先生におほめに預かったのが、ブルーグリーンの大海原を走る真っ白な帆船の絵。
たしか、全音楽譜のピースの表紙絵をコピーした記憶が有る。曲の題名はまったく憶えていないが、それからかどうかは知らないが、船は大好きだ。
特に白い大きな帆船にはあこがれを持っている。
海賊も、キャプテンホーンブロウも、ネルソン提督も勝海舟も大好き。みんな、男の中の男です。
錨を上げろ! 帆を張れ! スタンバイようそうろう。
さあ喜望峰へ向って出航だ。
コスタリカ・ハイウェイ Costa Rica Highway
去年の夏は、大阪で、花と緑の博覧会のプロデューサーをやった。
その中で、一番楽しかったのは、ミス・フラワークィーンの審査員をやった事でした。
いやほんと、なにしろ世界中の美人が次から次と現れるんですからね。
最終的にフラワークィーンはアメリカ代表に決定したけど、僕の印象に一番残った人は、ミス・コスタリカだった。
それぞれの代表と、10分ずつ位のインタビューをするのだが、コスタリカの小さな茶色の蛙の話が一番面白かった。
無論、彼女にだけ、えこひいきをして、特別に良い点を入れた訳では無い。
さて曲の方は、一寸昔なつかしいバカラック調に仕上げてみましたが、車の屋根の上に鳥かごやら、自転車やら、一杯つんで、クラクションをバンバン鳴らしながらハイウェイを走っている様子を想像して下さい。勿論、中でハンドルを握っているのは、にこやかに、ほほえんでいるミス・コスタリカです。
花通り Blümen Straße
今年も例年通り、音楽畑のレコーディングに、ロンドンへ出掛けた。
思ったより仕事がはかどって、2・3回息抜きにスコットランドでも行くか、という感じで、出掛けた先が、かの有名なネス湖。インヴァネス空港からレンタカーして20分もすると、もうそこは、深い藍色をたたえたネッシーの故郷。
まあ、モンスターミュージアムなんてのが有って、名所は何処でも人が一杯なのは仕様がないけど、一寸町をはずれると、6月のスコットランドは本当に素晴らしい。目がさめる様な緑の中に真黄色なフィンが、今を盛りと咲いていて、そんな道が、何処までも続いているのは、言葉にいい表せない程の美しさだ。
アマデウス通り Avenue Mozart
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト。今年200年祭が世界中で、にぎやかに行われている。
当然日本でも大騒ぎで、コンサートや、本の出版は勿論の事、酒やまんじゅうまでモーツァルトの名前がつくというものすごさ。
識者の中には眉をひそめる人もいますが、ま、これを機会に、今迄一度も、モーツァルトを聞いたことの無かった人でも、あんな、チャーミングな音楽に接する事の出来るというのは、素敵な事じゃないか……と私は思ってしまいます。
映画程、ひどい性格ではないにしろ、相当に天衣無縫悪く言えば出鱈目だった所が、親しみ易くていいですね。もしかすると神様って、あの位、意地悪で、優しくて、清らかで、下品だったのかもしれない。
世界中にモーツッァルトの名前がついた通りが沢山有って、アヴェニュー・モザールはパリの16区に有ります。
ヴィクトリア・ピーク・ロード Victoria Peak Road
アジアの国々は何処へ行っても人が多い。
北京の自転車軍団や、日本のラッシュアワー地獄は世界的に有名だが、香港のマーケット街もなかなかすごい人の波だ。さすがに食の国で、食べられる物は何でも売っている。それを一軒一軒冷やかしながらあるくのは実に楽しい。
香港には色々な名所が有るが、ヴィクトリア・ピークは、慕情の舞台で有名になった所だ。
マーケット街とはうって変って、イギリス調の街並みを、ドライヴしながら、山を登って行くと、ホンコンが一望の下に見下せる頂上に出る。
洛陽大路 Louyang Boulevard
中国は夢の国。
僕の頭の中は何百年も昔の中国で一杯。
三国志やら水滸伝の世界が僕の中国だ。
唐の都洛陽は、世界中の富と文化が集った所。大通りは一日中人の波がひきも切らず、夕暮れともなれば、天女の羽衣をまとった美女たちが、そぞろ歩き。行き交う人々のざわめきは、深夜になってもと絶える事は無い。
ロンサム・レーン Lonsome lane
僕の家は、息子も娘も留学をしている。
息子はとっくに帰って来たが娘の方はまだアメリカでがんばっている。
別にアメリカやヨーロッパが日本よりすぐれていると思っている訳でもなく、ましてや、留学が恰好良いとか、はくをつけるとか考えた事もない。
勉強も大事だが、何よりも大事な事は、家族や、友達とはなれて一人で暮らす淋しさを体験する事だ。
僕も経験有るが、あの淋しさはなかなかのものだ。
特に、晩秋から冬にかけては、昼も短いし、寒いし、実にみじめなものです。
しかし、その淋しさを乗りこえて、人間は大きくなって行くのだ……と私は信じる。
パリに留学していた頃は、一人で部屋にいるのにたえられなくって、よくオペラ通りを用もなくブラブラしたっけ。
恋人達の散歩道 Lovers Walk
昔パリでよく下宿屋のバアさんに、「家でゴロゴロしているなら散歩でもいってらっしゃい」、とよく言われたが、日本人の感覚からすれば、家にゴロゴロしているのも、ブラブラ散歩するのもさして変わりが無いと言う事になる。
まぁ、あまり運動する機会もなく、日照時間の少ないヨーロッパ人にとっては、散歩や、日光浴は、健康上欠かせないものなのでしょう。
その故かどうかウォークとか、プロムナードのついた通りの名前がよく目に入る。
ラヴァーズ・ウォークもロンドンに実際有る名前で、有名な、アビ・ロードスタジオのすぐそばに有る、ささやかな通りです。
月影の並木道 Moonlight Alley
月に人間が自分の足で降りたってからもう大分たつ。
神秘のヴェールがはがされた月なんかあんまり魅力がないと思っていたけれど、月は何時見ても今だに美しい。
月の光には太古から不思議な作用が有って、フランス語でも、コム・ラ・リューヌ(お月さんみたいな)とか、ルナティック(月につかれた)とか言うのは、一寸、頭のイカれた奴という意味で有る。
だから、若い男女が、青い月の下で恋におちいるなんぞは、ごく当たり前の事と言えよう。
道 La Strada (北海道拓殖銀行 企業イメージCM曲)
茶道、剣道、コ-ヒ-道、仁侠道、と色々有って、道を極めたり、道にはずれたり、道ならぬ恋におちいったり、日本人は、本当に道が好きだ。
ま、生真面目なのかな。この道一筋という言い方も有る。
どこまでも続く一本の白い道。
そのはてには一体何が有るのか……
音楽をはじめた時は、そう思ったけど、今だにまだ先が見えない。
今回のアルバムのタイトル曲です。
※このライナー・ノーツは、CD制作当時に書かれたものです。