音楽畑15 Mon reve
収録曲
- 1.夢
- 2.蜃気楼
- 3.シャングリラ
- 4.夢遥かに
- 5.コスモス
- 6.黄昏
- 7.月影の並木道
- 8.夢見る頃を過ぎても
- 9.過ぎ去りし夏
- 10.初恋
- 11.自由の大地
LINER NOTES
夢 Mon Reve
かなわぬ夢、儚き夢、夢物語り、遠き夢、夢みたいな事言うな、などなど、どうも夢と言う言葉には何か頼りない、いい加減な、ややネガティブな表現が多い様に思われる。 今まで色々な事柄を確率の高さのみで判断して突っ走ってきた結果、バブルは崩壊するは、世の中の価値基準はひっくり返るは、一体俺の人生って何なの? と考え込んでいる人が何と多いことか。 もうこうなったら腹を捉えて、人生一番確率の低いものに賭けて見ましょう。そうです、皆で夢を見ましょう、駄目でもともと、どうせかなわぬ夢なんですから。
蜃気楼 Mirage
疎開中、富山県の生地町に住んでいたことを前にお話ししましたっけ? 疎開って何?とおっしゃる方はこの先は飛ばして下さって結構ですが、生地町は富山湾に面した小さな平和な漁港です。富山湾は蜃気楼で有名な所で、生地でも時々蜃気楼警報? が出ました。 大人たちは必死で海岸に駆けつけていましたが、我々はまだ子供だったのと、なにか少し神秘的なものに対する漠然とした怖さも有って、とうとう一回も見ずじまい。今になってみると、一寸残念な事をしたなーと思っています。ここの所、子供の時からの夢を一つ一つ叶えて行こうと言うことで、スケジュールがぐちゃぐちゃになっている所を無理やりにこじ開けて、金環食も見たし、オーロラツアーにも行きました。 さて、来年の春あたりはやっぱり蜃気楼かなー? 行ってきまーす!
シャングリラ Syangri-la
このせせこましい日本、何処に住んだところで、そう変わりゃしないと思っていたら、あるところの調査で、福井県が日本でもっとも住みやすい県と出ました。 一人あたりの住居面積が大きいのと、生活費が安いこと、食べ物がおいしい事等を総合するとこういう結果になるようです。 その福井県に頼まれて、イメージサウンドを作曲しました。ふ、く、い、と言う文字を2、9、5、と言う音に置き換えてテーマ造りをしてみました。福井が理想の夢の街かどうかは、2、3回訪れたぐらいでは判断しかねますが、ま、住めば都などと申します。 住み慣れた所がその人にとってのシャングリラと言う事になるのでしょうか。
夢遥かに Old Time Dream
パリに留学する時は本当に色々大騒ぎで、お見送りも頂いたし、お餞別なんかも沢山いただいた。その中にはいまだに時々読み返している横光利一の「旅愁」や「スイス紀行」の中に混じって、一寸首をひねる様なものもいくつか有る。 その一つの俳句入りのこけし人形という代物、これは一体何に使うのかいまだによく解からない。ただ暇だもんだから、そこに書いてあった俳句はあらかた覚えてしまった。 「長き日の、積もりて遠き昔かな」。これもその中の一句。あの頃のパリはろくな日本料理屋もないし、邦字新聞なんか勿論ないし兎に角ホームシックで早く学業を終えて日本に帰りたい一心だった。その分一生懸命勉強したとも言えるが、ながーい一日も積もれば2、3年すぐ経ってしまうと言うところが心に残ったのだろう。 最近ではむしろ時よ止まれと言いたいような心境だ。あの頃に特に戻りたいとも思わないが、もしやり直せるものなら、もう少し丁寧に時間を使ってもよかったかな、とか思うけど、ま、青春とはあんなものかも。あれから40年、青春のパリは遥か彼方に有り。
コスモス Cosmos
この間、地方でのコンサートの時、ステージで子供たちから質問が有った。「先生は将来何になりたいんですか?」勿論ためらわずに、宇宙飛行士と答えたのだが、妙に客席が受けている。よくよく考えてみたら、いい年したオジサンに将来の夢を聞いたのが面白かったらしい。なんだなんだ、おれだってまだ将来ぐらい有るぞ! これからの15年か20年の間に色んな事が出来る。オペラ書いたり、シンフォニー作ったり、子供作ったり。 と、とにかく色んな事が出来るゾーと叫んでみたところで、宇宙飛行士は無理だろうな、宇宙飛行士は。なんたってジェットコースターだって年齢制限が有るんだから。
黄昏 Twilight Pale Moon
なんでもかんでもバブルの故にするのも一寸問題があるが、あれ以来サッカーは負けるは、円は下がるは、家の犬は病気になるは、日本はどうもろくな事が無い。こんなにテンションの多い時代を生き抜いて行くには、何処かで息を抜かなければ生きて行けない。一日中シャンとしている訳にはいかないのだ。 一日の中でも黄昏はボヤーッと夢を見るのには最適の時間だ。ほんの一時、昼と夜が重なり合って、黄昏の淡い光の中で人生を考えたりすれば、ほら又今夜も残業をする元気が湧いて来ると言うものです。人生いろいろ考えてみたけれど、どうもやはり残業はいやだと言う方、「黄昏ピアノヴァージョン」で夢の続きをどうぞ。
月影の並木道 Moonlight Alley
月に人間が自分の足で降り立ってからもう大分たつ。神秘のヴェールがはがされた月なんか、あんまり魅力がないと思っていたけれど、月は何時見てもいまだ美しい。月の光には太古から不思議な作用が有って、フランス語でもコム・ラ・リュヌとかルナティックとか言うのは、何時もぼやーっと夢を見ている、ちょっと一風変わった変な奴と言う意味で有る。だから、若いカップルが、青い月の下で恋におちいるなんぞはごく当たり前の事で、昼間の成田空港で夢から覚めてそのまま別れてしまうなんぞも、これ又ごく普通の事と言えよう。別れた人も、いまだにくっついている人も、ピアノヴァージョンで、お楽しみ下さい。
夢見る頃を過ぎても Dreamin' of you
僕は年なりと言う言葉がどうも嫌いで、いい年してとか、もう一寸落ち着いたらなどと言われると、大変機嫌が悪くなる。大体音楽をやっている奴が妙に分別くさくなったり、枯れてしまったらもうおしまいだ。何時も好奇心に満ち満ちて、恋愛は何時何迄も現役、などと言うと誰かさんに怒られそうだが、それもこれも良い作品を生み出す為でやむを得ない事なんです。何時迄も子供みたいに夢を見続けていきたいと思う。
過ぎ去りし夏 Try Again
ひと夏の恋、と言う言葉が有る。決してひと秋でも無ければ、ひと冬でも無い。人恋しき春、などとは言っても、ひと春の恋などとは言わない。 どうも夏と言う季節には何か人をやみくもに駆り立てる、魔物のような力が秘められているに違いない。そしてひと夏の恋となれば、悲しみにくれるのは大体女性と相場が決まっている。 ま、もともと男には神から授かった使命の一つに、種付けと言う重要な作業が有る訳で、これを、神の命ずるがままに遂行するが為に、色々と世の中に悲劇が起きる事となる。 そこんとこ、一つ女性の方にもご理解戴きたいなーなどと思いながら、過ぎ去りし夏を懐かしんで、夢よもう一度、トライアゲン。
初恋 Premier Amour
人生は錯覚の連続だと誰かが言っていたが、それでよろしいんじゃないでしょうか。もう世の中にはこの人しかいないなんて思ったり、入試にパスして自分の人生が前途洋々たるものに見えたり、やっと生まれたわが子が永遠に自分の言う事を聞くと思ったり、ま、色々有りますよね。世の中何も信じられなくっても、愛は永遠だなどと夢みたいな事を言いながら、3回程結婚した人が私の友達におりますが、これも可成り偉いと思います。私なんかどちらかと言えば現実主義者で、何度結婚したところでそうそう女性の本質は変わりゃせんと思っている人間も、初恋の彼女だけはまるで夢の中のマドンナの様にみえましたもんね。合唱部で一緒だった山田さん、元気ですか? 何となく同窓会なんかでは逢いたくないなー等と思ったりしていますけど。夢を大事に、ね、山田さん。
自由の大地 The Free Land
最近のコンサートでは、オープニングにこの曲でスタートするケースが多い。ドーンとティンパニーが鳴ると、お! 、来たな! 、と言う感じになるらしい。
作曲した時のイメージも、世界中に色んな人が生きていて悲しんだり、喜んだり、夢をみたりしながら毎日を暮らしていると言う事だから、自由の大地と言うとどうしても重厚な盛り上がりの曲と言うイメージが強いようだ。じゃ、ピアノで静かに始まったらどうなんだろう? いい夢見れるかな? と言うのが、今回のコンセプトで、本人はなかなか気にいっている。いやいや、あれは矢張りティンパニーがドーンと鳴らにゃ、と言う方は、音楽畑第6集もあわせて、お買い求め下さい。
※このライナー・ノーツは、CD制作当時に書かれたものです。